【日々雑感】「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んで ー退職した今の感想は?ー

日々雑感
ライ麦畑

今回J.D.サリンジャーの「The Catcher in the Rye」(村上春樹さんの訳)を読み返しましたので記載します。

目次

読み返した経緯 

  • 最初に読んだのは確か高校生の頃で、野崎孝さん訳の「ライ麦畑でつかまえて」でした。当時2回は読み返したのを覚えています。
  • 2003年に村上春樹さんの訳で「The Catcher in the Rye」が出たのは知っていたのですが、”そのうち時間ができたら読み返してみたいな”と思いはしたもののそのままになっていました。
  • 高校時代から50代後半まで間が空いてますので、残っているイメージは”崖のある草原で男の子が子供を捕まえる”位で、そのきれいなイメージ以外に何が良かったのかは全く忘れてしまってました。 

読み返した感想

  • あらすじは主人公の男の子のホールデンが日本でいう高校を学業不良でクリスマス前に退学し、実家に帰る数日のストーリーです。ホールデンがモノローグで思い出を語りながら、帰るまでにつまらないやってもしょうがないような行動するお話です。 
  • 野崎孝さん訳の「ライ麦畑でつかまえて」の時もそうだったのですが、 読み始めてからホールデンの語る世界に入り込むまでにしばらく時間がかかります(どうでもよいようなことばかり嘘を交えて語るので)。そのうちになぜかホールデンの行動や語り口に惹き込まれていきました。 

高校の時に読んだ時もそうだったのを思い出しました。 

  • 当時ホールデンの行動で”嫌だな”と思ったところは今回も同じでその辺は変わってませんでした。 
  • 残っているイメージがどういう流れで出てきたのか覚えてませんでしたが、妹のフィービーとの会話の中で”自分がなりたいもの”を喋る中で出てきていました。
  • 今読んでもここのイメージは鮮烈で解放感を感じます。”崖のあるライ麦畑で子供が崖から落ちないように捕まえる人”という映像を鮮明に感じるために前半のどうでもよいようなホールデンの語りと行動が必要なのだと思います。 
  • 高校生の時、クラブ活動や、読書、映画は楽しかったけど、特に好きな教科もなく理系にいくべきか文系に行くべきか、大学に行かずに働いた方が良いのかと考えていた自分の感情が蘇りました。 

大貫妙子さんの「色彩都市」の中に自分と出会う歌詞が出てきますね!

  • 社会に出て働くことが自立のために必要であることは頭で理解はしていても、”自分のやりたいことは社会に役立つ職業として見つけるのは難しいのでは?”という当時の悩みがホールデンと共鳴したため、鮮烈なイメージがそのまま今まで残っていたのだと思います。 
  • 退職して、社会に役立つ職業のことを考えずに、自分のやりたいことに十分時間を使えるようになった現在はある意味高校生の時のような束縛から解放されています。 

当時の自分から見ればうらやましいかもしれません・・・

  • やりたいことリストを見返しても”社会に役立つこと”という項目は乏しいと思いますし、これまで仕事を通じて現実社会でその点の宿題はやり終えたように思います。仕事をしていてできなかった自分のやりたいことに自分の時間を使いたいというのが今の感覚です。 
  • 高校生の自分に”なりたくないと思っているおなかの出たおじさんになってしまうけど、退職1年目までは総じて楽しい人生が待っているよ”と声を掛けたくなりました。 

退職2年目以降はこれからなのでわかりませんが・・・ 

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続ものぐさ精神分析

  • 読み返した後、岸田秀さんが「ライ麦畑でつかまえて」の評論をしていたのを思い出して本棚を探しました。 

続ものぐさ精神分析」の中にあります! 

  • ホールデンは”自己不確実型精神病質者に似ているが暗さが無い”というところから評論している内容です。 
  • 高校生当時も今も、どうでもよいことばかりしているホールデンに惹き込まれるのは、悩まずに生体反射のように語り行動をしているところだと思います。 
  • 岸田秀さんは”規範としての善と美を疑っている”と記載していますが、社会に出れば味わう規範で自分にとってバカバカしいと感じることに対して、生体反射のように嫌悪感を示すところがホールデンの魅力だと思います。 
  • それで結局何になりたいかと言えば、フィービーの求める社会に認められている職業ではなく、”崖のあるライ麦畑で子供が崖から落ちないように捕まえる人”というところにうまく言語化できない一貫性を感じて解放感があるのでしょうね。 
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バナナフィッシュにうってつけの日 

  • ホールデンの後日談のように私が感じるのが、サリンジャーの「ナインストーリーズ」に入っている”バナナフィッシュにうってつけの日”の主人公のシーモアです。 
  • 小さい女の子のシビルとシーモアのバナナフィッシュに関する会話の後、シーモアが拳銃自殺するというのがあらすじです。 
  • この話も謎だらけで、意味ではつながりが分からない回路を通った解放感があります。 

まとめ 

  • 50代後半になって読み返してみましたが、今でも楽しく読めました。「やりたいことリスト」で懸念した当時の自分の否定や感情の老化はありませんでした。 
  • 成長したのかどうかはわかりませんが、当時の自分の感情を追体験することで、凝り固まったコリをほぐしたようなカタルシスがあります。 
  • ムーンライダースの「マニアの受難」の歌詞の中で”何の価値もない もの こと 好き”とありますが、今は自分の時間を他の方から見れば価値の無いことでも優先して使って行きたいと思っています。 

まだ退職2年目なので退職した方々のブログを読んでいると、そのうちまた”役に立つこと”をしたくなるかもしれませんね! 

蛇足情報 

動画を検索すると加藤茶さんが楽しそうに歌っています! 

  • 私にとってこの歌はアニメ「ルパン三世」の”ネッシーの唄が聞こえる”で峰不二子が歌っていたのが最初でしたのでそちらの思い出の方が鮮烈です。

こちらも動画検索で出てきます!  

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